最新号
IPジャーナル最新号
第37号
特集
「デザイン経営」
「デザイン経営ことはじめ
-デザインで企業経営はどのように変わるのか-」
「無形資産としてのブランドを中核に据えた企業変革」
「貝印の開発方針「DUPS3」とデザイン経営を最大化する知財活動」
「中小企業のデザイン経営支援の現在地
-デザイン経営支援と知財経営支援の接続に向けて-」
定価:2,000円(税込)
発行日:2026年6月15日(会員用PDF版は2026年6月1日発行)
目次
巻頭言
・デザインはどこに向かおうとしているのか
深野 弘行公益財団法人日本デザイン振興会理事長
特集「デザイン経営」
・デザイン経営ことはじめ
-デザインで企業経営はどのように変わるのか-
土生 哲也株式会社IPディレクション 代表取締役・弁理士
デザイン経営は、「デザインされたモノ」による競争力強化ではなく、デザイナーに特有の「デザインする行為」を経営や事業開発のレイヤーにも適用することに主眼があり、デザインによる自社‘らしさ’を軸にした取り組みは、企業に変化が激しく不確実性の高い環境への適応を促す。また、暗黙的な経営資源を知的財産という形式知へ変換する役割も担い、知財マネジメントと両輪で捉えるべきものでもある。
・無形資産としてのブランドを中核に据えた企業変革
勝沼 潤NECコーポレートエグゼクティブ チーフデザインオフィサー
企業価値の源泉が無形資産へと移行しつつある中で、ブランドは企業価値に重要な影響を及ぼす無形資産の1つとして捉えられる。ブランドとは、ターゲットの心の中に形成される認知・認識、すなわちパーセプションである。本稿では、NECの事例を通じて、ブランドを経営と接続し、価値提供とその運用を組織的な仕組みとして定着させることで、企業価値の持続的創出につなげていくための考え方と条件を整理する。
・貝印の開発方針「DUPS3」とデザイン経営を最大化する知財活動
地曵 慶一貝印株式会社 取締役 常務執行役員 知財・法務本部長 CIPO兼CLO
創業118年の歴史を刻み世界で唯一の総合刃物メーカーを自負する弊社貝印。その無形資産の核心を成す経営理念として、先代社長より受け継がれてきた開発方針「DUPS3」がある。近年、この方針自体の大きな深化とともに、デザイン経営を基礎とした“無形資産経営”スタイルへ全社を挙げて変貌している。そこでは、デザイン(D)、独自性(U)、特許性(P)、物語性(S)といった無形資産全般を経営の中核に据えたビジネスを展開している。その主導的役割を担う知財部門の活動を中心に、経営層や他部署をいかに巻き込むか、求められるスタンスやスキルセットなどについて言及する。
・中小企業のデザイン経営支援の現在地
-デザイン経営支援と知財経営支援の接続に向けて-
横山 幸弘特許庁 デザイン経営プロジェクトチーム 中小企業支援チーム チーム長
本稿は、2025年度に実施した「デザイン経営と知的創造サイクルの関係に関する調査研究」で得られた知見に基づいて、デザイン経営支援の現状を整理し、紹介する。その上で、中小企業支援において、デザイン経営と知財経営が別々のものとして捉えられているという問題意識の下、デザイン経営と知財経営との関係を、企業内部のプロセスと中小企業支援の両面から検討し、今後のデザイン経営支援の可能性を紹介するものである。
寄稿
田村 善之東京大学法学政治学研究科教授
日中共同研究事業は、中日の第一線の研究者が集ったところに、知財の実務的な知見を投入した上で、段階的に共同研究を遂行するフォーマットが構築されており、共同研究の実を挙げることに成功している。そのような中で、2020年度から毎年度、参加している筆者は、共同研究のテーマに係る日本の法制度上の課題と対応策とその評価という立法論をも視野に入れた研究をなすことを心掛けている。
寄稿
中山 一郎北海道大学大学院法学研究科 教授
本稿では、知的財産に関する日中共同研究に参加した経験を基に、これを自己評価し、その意義について検討した。筆者の研究に限らず、総体としての日中共同研究の成果は、中国における様々な政策立案の基礎となる情報の提供という面において一定の貢献を果たしているといっても許されよう。むろん、日中共同研究は、日本側の知見・経験を一方的に中国側に提供するものではなく、互恵的な学びのプロセスとして筆者自身もいくつもの気付きを得た。
IPランドスケープ
(第25回)IPランドスケープの社内浸透と生成AI支援の運用設計
河合 郭葵株式会社島津製作所 知的財産部 副グループ長
渡辺 由佳子株式会社島津製作所 知的財産部 主任
当社では、2015年にIPランドスケープ(以下、IPL)の前身となる取り組みを開始して以来、提供件数の増加、提供先部門の拡大、提供内容の質的向上といった活動の進展を実現してきた。
特筆すべきは、IPLを担うメンバーが少数であり、体制が大きく増強されていないにもかかわらず、これらの成果を継続的に積み上げてきた点であると考える。背景には、地道な実績の積み重ねに加え、社内への広報活動による利活用の定着、ならびに生成AIの活用などによる業務の効率化・高度化がある。
本稿では、当社におけるIPLの取り組みと、その成果を支えてきた工夫について紹介する。
フリーコンテンツ時代の情報リテラシー
(Vol.44)行き過ぎた効率優先の日本?「失敗すること」について考えた
宮武 久佳東京理科大学嘱託教授
Column 知財の国際舞台から
夏目 健一郎WIPO 事務局長補
知財世界の醍醐味
(Vol.40)鰻のパック包装体事件
半蔵門伝次郎水産会社勤務、一級知財技能士(特許専門業務)・弁理士
地殻変動に揺れるエンタメ業界
(第12回)日本のアニメ業界における最新動向と重要トピック
―アニメ業界の現在を内側から見る①―
座談会ゲスト 菱山 光輝
弁護士 中山 茂 × 弁護士 國松 崇 × TBS 矢内 一正
エンタメ業界(映画・演劇・テレビ・アニメ・音楽・出版・ゲーム等)の法律実務に関する仕組みは、もともと複雑であり、業界特有の要素が強いものであったが、コンテンツ自体が変貌し、ビジネスモデルが時代とともに急速に変化していく状況下で、ますます混迷を極めた状態に陥っている。
本連載第1回から第11回までは、主に映像業界(映画・テレビ)で起きている「地殻変動」を取り上げつつ、そうした事態に法務がどう対応していくべきかについて議論を重ねてきた。今回は、「アニメ業界」をテーマとして、アニメの製作実務と法務の双方に知見を持つ菱山光輝氏をお招きし、座談会形式で議論を行った。菱山氏は興収116億円を突破した『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』(2024)のプロデューサーであり、2025年に弁護士として活動を始めた法律家でもある。同氏の現場での経験を踏まえながら、アニメ業界の現在を多角的に検証したいと思う。なお、この座談会は2026年4月7日に行われたものである。
グローバル知財情報
インドでの特許権侵害訴訟における特許発明の実施
今浦 陽恵特許庁審査第一部光デバイス 審査監理官
本稿では、インドでの特許発明の実施について、実施に該当する行為や特許権侵害訴訟の判断に与える影響を検討した。判例分析から、侵害訴訟の場面では不実施による弊害が大きいことを示した。また、統計分析から、権利行使の際に用いられる係争特許は特許権者側が実施しているものにほぼ限定されている反面、インドで有効に存続する特許には不実施のものが多数含まれる実態を明らかにした。そして、不実施の特許が多数存続している理由について、インドでの特許戦略や事業戦略の検討に資する3つの仮説を提示した。
ワシントン便り
蛭田 敦(一財)知的財産研究教育財団知的財産研究所ワシントン事務所所長
知財関連省庁からのお知らせ
・著作物等の利用に関する裁定制度の運用改善に向けてシステム面の整備を行いました
文化庁 著作権課 著作権調査官 飯田 真弥
・「アフリカ知的財産担当官会議」の開催報告
外務省 経済局 知的財産室長 山崎 利直
・大学の知財活用、技術移転活動に関する調査研究報告書を新たに公開しました
特許庁 総務部 企画調査課 活用企画班
・「アントレプレナーシップ教育の一環として行う知財教育」の教材を新たに作成しました
特許庁 総務部 企画調査課 人材育成班
投稿論文
腰本 裕之東海大学・大学戦略本部・学術戦略研究所/ マイクロナノ研究開発センター 教授